齋藤 正男先生ご退職特集
齋藤 正男先生のご退職に寄せて
南部 周介
齋藤正男先生、長年にわたる研究生活、お疲れ様でした。齋藤先生には9年間に渡りご指導いただき、研究者として生きていくために何が必要で、何を大切にしていくべきかということを学ばせていただきました。正直、齋藤先生は非常に厳しかったです。私は9年間齋藤研究室に在籍しましたが、大小を含め褒めていただいたのは2度しかありません。一度は投稿論文がThe Best of J.B.C.に選ばれたとき。一度はAsBICの口頭発表後です。特にAsBICでの出来事は、「なかなか認めてもらえないな〜。」と苦悩していた時期でしたので、今となっては一番良い思い出です。
齋藤先生のお言葉も多く耳に残っていますが、その中でも「勝たなくちゃ面白くない。」と齋藤先生はよくおっしゃっていたのを覚えています。その勝利のために、「簡単だったり、結果が見えていることをきちんと形として残すことも大切だ。だが、難しいことに挑め。そうしなければ科学者として勝てない。」ともおっしゃっていました。『きちんと形として残す』とは科学者としてコンスタントな成果を出すということだけでなく、文句の言われることのないきれいなデータを取るまで努力すること、そのデータを美しい図として残すことという科学者としての日々の基礎業務を示しておられました。そして、『科学者としての勝利』のためにはそれらの基礎業務を基盤とし、みなが難解であると思うテーマに挑み、その問題を発想力により打破しろと教えていただきました。さらに、迅速なデータアップ、多角的な解析、多分野からの考察が求められる近年において、齋藤先生は「優秀な科学者とうまくコラボレーションをしろ。」ともおっしゃっていました。私は齋藤先生がこれらのことを本当に実践されてきたのを肌身に感じる機会が多くありました。特に、海外の学会ではその影響力に驚きました。私がポスター発表などをしていると「あー、マサオの教え子か。」、「マサオの教え子は間違いない。」などと多くの先生方に声をかけていただき、初対面の私をよく飲みに連れて行ってくださいました。齋藤先生が積み上げてきた実績と他の研究者との信頼に感嘆・感謝した思い出です。
私はアカデミックから離れてしまいました。その理由の一つは、アカデミック界で私は弟子として、師匠である齋藤先生を超えられないと感じたからです。ただ、異なる道ではありますが科学者として勝利したいと思っています。そして、いずれは齋藤先生を超える成果を残すことが目標です。齋藤先生には私が残す成果を見届けていていただきたいです。ですから、お体に一層の気を払い、これからも科学者として多大な影響力を発しながら、お元気で居てください。
繰り返しになりますが本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。