小林 長夫先生ご退職特集



小林 長夫先生のご退職に寄せて


古山 渓行


小林先生、約40年にわたる東北大学へのご奉職、誠にお疲れ様でした。末端で小林研に参画させていただいた一名として、小林研での思い出を簡単に述べさせていただきます。

私自身は学生時代、主に有機金属を用いた合成反応を行っており、小林先生の主たる研究テーマであるフタロシアニン・ポルフィリンについて、名前は聞いたことがあるが……という状況でした。そんな私が縁あって小林先生の研究室に採用していただいたのが2010年の夏、しかしその1週間後には小林先生はじめスタッフの皆さんが国際学会に行ってしまい、一人取り残された私は当然まだ研究室にどのような器具があるかも理解しておらず、またまだ学生全員の顔と名前も一致していなかったので、とりあえず目についた教授室やセミナー室の壁一面に並ぶフタロシアニン関係の教科書・論文を見て圧倒されたと同時に、必死に基礎知識を勉強したことを覚えています。

この件をはじめ、小林先生といえば海外との積極的な交流について触れないわけにはいきません。教授室にはこれまで小林先生が行かれた国で集めてきた様々なオブジェが置かれ、研究室には常に数カ国からの留学生が短期・長期を問わず研究を行っているような国際派を絵に書いたような研究室でした。特に化学研究が比較的マイナーな国との交流に力を入れられており、これは研究交流を通し、その国の人たちをエンカレッジしようという小林先生なりのお考えかと思われます。私が着任した時には南アフリカ共和国との共同研究が走っており、プロジェクトの関係で私も着任しすぐ当時の学生と2人だけで飛行機を3回乗り継いで現地の大学へ行き講演したのも今では良い思い出です。

これらの総決算と言えるのが退職に先立ち企画した国際シンポジウムです。小林先生の呼びかけに対し世界中からそれぞれの国を代表するような研究者が二つ返事で蔵王まで来てくれたことは私どもにとって予想はできたものの驚きでありました。ちょうどこの時期は蔵王山の噴火や台風など懸念材料がありましたが、小林先生のお人柄を反映してか、鮮やかな紅葉の中シンポジウムは成功裏に終えることができました。

そのような研究に対する積極性でしょうか、一般的には教授の退職直前の研究室は規模が縮小すると言われる中、小林研は最終年度に向かうにつれ人数が増加する人の絶えない研究室となりました(年齢よりお若く見られることが多いことも関係していたかもしれません)。実際に運営する側としては大変なことも多かったのですが、小林先生が「『先生の研究室は人もたくさん、論文もたくさん出ていて、本当に最終年度なのでしょうか』って最近良く言われるんだよ」と良く嬉しそうにおっしゃっていたのでとても頑張り甲斐がありました。

小林先生に対して外部の方が持たれる印象は研究一筋と言うのが一般的かと思いますが、先生は研究と同等かそれ以上にご家族を大事にされており、研究室内での雑談でも良くご家族の話題が出ておりました。東北大学のご退職後郷里である信州に異動されたのも研究を継続しながらご家族との時間を大切にしたいというご意向とうかがっております。これからもご健康には十分気をつけて、私ども門下生をお見守りくださりますようよろしくお願いいたします。


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