追悼



甲千寿子先生 追悼 權 垠相


故 甲千寿子 先生を偲んで


權 垠相


2013年8月19日に、甲千寿子先生が急逝されました。前の週までX線結晶構造解析ソフトウェアの解説書のことで、メールなどで連絡を取り合っていました。その知らせは先生の友人からでした。あまりにも突然すぎて、まだ心のどこかで信じられないまますぐに先生のご自宅に電話をかけました。ご主人の甲國信先生が出られ、呼吸不全で救急車で病院に搬送されたが、間に合わなかったとの話を聞いて、少しずつ現実を受け止められるようになりました。

                      

甲千寿子先生との出会いは、今から17年前に遡ります。筆者が大学院生の時に初めてX線結晶構造解析のことでご指導をいただき、結晶の選別から測定、解析までを、一つ一つ懇切丁寧に教えていただきました。ある年は年末年始の休み中にX線解析を行ったこともあり、大変ご迷惑をおかけしたにもかかわらず、筆者以上に一生懸命で、熱心にご指導してくださいました。

近年はG-COEの支援をいただきながら開発・整備を進めてきた、単結晶構造解析ソフトウェアYadokari-XG 2009の普及活動にご尽力されていました。関連の講演・講習会なども開催しました。その配布初年度である2009年度ソフトウェアの利用者数は342人で、次年度の追加利用者数は405人でした。そして、最終年度である2013年度までの延利用者数は1500人にのぼり、380の大学や研究機関、企業などに利用者がおり、海外からの利用申請も多数ありました。

                      

 2011年2月に東京の化学情報協会で開催された「第2回Yadokari-XG 2009講習会」でのお話が先生の最後の講演となりました。その後は体調が優れない状態が続いたり、喉の手術を受けられたりしましたが、2012年7月頃には高校の同級生の皆さんと2泊3日で田沢湖と十和田湖に旅行に出かけられるようになるまで体力も回復していました。これからまた先生にご指導をいただきながらいろいろと進めようとしていた矢先の訃報でした。

先生はとても懐の深い方でした。いつも先生の周りには自然と人が集まっていました。女性でありながら豪快な性格で、そんなところも魅力的な先生でした。先生には一生忘れることのできない、そして返しきれないご恩があります。先生が最終講義で使われた、その日の漢字は”絆“でした。元来器の小さい小生には先生のまねはできそうにもありませんが、いただいた教えを大切にしながら日々努力して参ります。

                      

甲先生、ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。

權 垠相(平成13年、DC修了)

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