学生受賞記念寄稿
藤瀬賞受賞を受けて
大石 將文
この度、藤瀬賞をいただきました。このような名誉ある賞をいただくにあたりまして、日頃からご指導いただいている寺田眞浩先生、中村達先生、椴山儀恵先生、近藤梓先生に感謝申し上げたいと思います。また、徹底して院試勉強会を開いてくれた先輩方、共に勉強した友人たちにも感謝しなければなりません。
院試勉強といえば今から2年ほど前のことになりますが、今でもはっきりと覚えています。研究室での実験が忙しく、辛かった、そんな中での院試勉強期間でした。研究室を辞めてしまおうか、研究室に残ろうか、そんな2択に揺れながら院試勉強期間の7月を迎えた記憶があります。この2択を決断しない限り院試勉強には身が入らな・「と考えた私は、自分の研究室とほかの研究室の研究内容を見比べながら自分の気持ちと向き合いました。考えを深めていくうちに、自分に与えられているテーマが非常に挑戦的であり、困難であり、それ故にやりがいのあるテーマであると認識するようになりました。またこの研究テーマにまだ携わっていたいとも思いました。最終的には「反応有機化学研究室に残りたい」の1択しかありませんでした。
大きな決断を自分の中で終えた私は、院試勉強にとても集中できるようになりました。午前中から青葉山図書館へ向かい、気付けば図書館が閉館する午後8時になっている、物足りないので時間外利用して夜11時に帰る、そんな生活が1か月半続いた気がします。時折リフレッシュしたくなった時は、映画を見に行ったり、花火大会へ出かけたり、震災以降お世話になった薬学部の研究室の飲み会へお邪魔したりもしました。
さて、現在私は希望した反応有機化学研究室で不斉ブレンステッド塩基触媒の応用に従事しています。未だ多くの課題が残された分野であると認識しています。希望して携わっているこの分野で自分の仕事を残して、更なる分野開拓の可能性を提示していきたいと考えています。有機化学という分野は、自分の頭でしっかり考えること、実際に行動して反応を仕込むこと、知識を蓄えること、作業の効率化をはかること、人に教えを乞うこと、など求められることが多く一筋縄ではいかない分野だと思います(私はまだまだできていませんが…精進あるのみですね!)。また実験でうまくいかないこともたくさんあるので、諦めない気持ちも大切だと思います。後悔のないよう、努力を惜しまず今後とも研究へ邁進していきたいと思います。
最後にこのような機会を与えていただいた東北化学同窓会の皆様に御礼申し上げるとともに、皆様の益々のご発展をお祈り申し上げます。
藤瀬賞受賞を受けて
伊藤 優志
この度、私は藤瀬新一郎博士奨学賞を戴くことになりました。この場を持ちまして、私と関わってくださった皆様方、特に分析化学研究室、及び生命分子ダイナミクス研究室の皆様に対し感謝の言葉を申し上げます。
実は、私は大学院進学の際に研究室を変更しました。その理由は主に二つあります。それは、分析化学研究室の前教授の寺前紀夫先生が、私が卒業する年に退官されたということと、移動前後の研究室が生体分子を分光学的手法で解析しているという点で共通していたということです。学部生のときには旧寺前研、現西澤研に所属し、RNAを選択的に染色する色素の開発を行っていました。寺前研の皆様からは、研究や大学院入試勉強について教えていただいたり、生活の面でも支えていただいたりと、大変お世話になりました。
一方、現在は高橋研に所属し、がん抑制タンパク質p53のDNA上の動きに関する研究を行っています。p53は紫外線やストレスなどに応答して、細胞内で合成されるタンパク質です。p53がDNA上の標的配列という部分に結合すると、がんを抑制するタンパク質が合成され、がんが抑制されます。しかし、p53の標的配列付近での挙動が分かっていないので、私の研究目的はその解明にあります。大学院入試勉強の意欲を維持できたのも、研究室見学の際に、高橋研の研究が非常に興味深く感じられたことにあります。この点で、高橋研の皆様にも大変お世話になりました。
先程も申し上げた通り、私は研究室を変更しました。これは、過去の藤瀬賞を受賞された方々と比較すると、非常に珍しい事例であると思います。私は、東北大学のレベルが非常に高いので、どの研究室でも非常に有意義な研究生活を送ることが出来ると考えました。実際に移動してみて、研究室を変更することは決してマイナスではなく、むしろ自分が現在やりたいことができる研究室に所属するべきですし、その結果として研究室を変更することも一つの選択肢であるということに気付きました。今回の大学院入試を通じて、私は入試勉強も研究も、楽しむことが一番大事であると実感しました。実際に、私はその意欲でもって賞を戴くことができました。
最後になりますが、このような栄誉ある賞を授けてくださった東北化学同窓会の皆様方に御礼を申し上げます。そして、東北化学同窓会の皆・lの益々の御発展をお祈り申し上げます。
荻野博・和子賞受賞を受けて
菱沼 直樹
この度、荻野博・和子奨学賞を受賞いたしました。この場をお借りして、この賞を設立された荻野博・和子両先生、常日頃お世話になっている化学教室の先生方と先輩方、勉学を共にした友人、親をはじめとした親族の皆さんには深く感謝申し上げます。
この賞の受賞を知ったのは、帰宅後に研究室から来たメールでした。その当時は、お恥ずかしながらこの賞の事を存じ上げず、その夜は、「何かしたかなあ?」と色々考えていました。その翌日、研究室の先輩から成績優秀者が貰える賞だと聞きました。まだまだ未熟者である私に、このような名誉ある賞をいただいた事、大変嬉しく思っております。
僭越ながら、賞を頂いた要因を思い巡らしてみると、基本的な事ではございますが、どの講義にも欠席をほとんどしなかった事と、例え自分の興味が薄い分野の話でも、なるべく話を聞こうとする事、そして負けず嫌いな性格(もとい諦めない心)が賞の要因になったのではと思っています。私はこの素晴らしき賞に見合うように、よりいっそう精進していく所存でございます。
現在、数理化学研究室で研究生活を送っていますが、将来は高校の先生になろうと思っています。化学の発展には研究が重要ではありますが、教育も同じ位重要だと考えており、現在、化学を研究している人の中には、恩師に感化されたので化学科に入ろうと決めたという人は少なくないでしょう。私は、そんな恩師になれたらというのが、人生の目標の一つです。
最後になりますが、このような素晴らしい機会を与えて下さいました東北化学同窓会の皆様に感謝を申し上げるとともに、より一層のご発展を心からお祈り申し上げます。
荻野博・和子賞受賞を受けて
鈴木 優子
この度、荻野博・和子奨学賞を受賞しました。このような賞を受賞でき、大変嬉しく、またとても光栄なことと思っています。
私は高校生の頃から化学の授業や実験が好きで、化学を深く学びたいと思い化学科への進学を決めました。しかし、大学で学ぶ化学は高校での化学からイメージしていたのものとは大きく異なり、1年生の頃は授業についていくのがとても大変で、どうして化学科に入学してしまったのだろうと挫けそうになったことが何度かありました。それでも、2年生になって本格的に専門科目の授業が始まったときに、自分は化学を学びたいと思って東北大に入学したのだから専門の勉強だけは頑張ろう、と決心しそれ以降は全学の授業よりも専門の授業に重きをおいて勉強をするようにしました。今思うとあの時の決心がなければ化学の勉強をここまで頑張ることはできなかっただろうと思います。
あなたは勉強できるからしなくていいよ、と言われることがたまにあるのですが、私は、自分は勉強ができるなんて思ったことは一度もありません。他の人よりも一つのことを理解するのに時間はかかるし覚えたこともすぐ忘れてしまいます。でも、だからこそ人よりたくさん頑張らなければいけないと思って今までやってきました。
楽しいことだけでなくつらいことや苦しいことも多い3年間でしたが、今回の受賞で自分の頑張りを認めていただけてとても感謝しています。
現在は合成・構造有機化学研究室に所属し、実験、実験、実験の毎日を送っていますが、それこそ自分がやりたいと思っていたことができて毎日がとても充実しています。このような充実した生活が送れているのは同じ研究室の同期、たくさん面倒を見てくれる先輩たち、指導してくださっている先生方がいるからだと思っており、研究室の皆様にはとても感謝しています。
最後になりましたが今回このような機会を与えてくださいました東北化学同窓会皆様に深く感謝を申し上げるとともに,益々のご発展をお祈りいたします。
総長賞受賞を受けて
武井 麗
この度は、総長賞という名誉ある賞を授かり誠に光栄に存じます。受賞したことを聞いた際には、あまり実感が湧いていませんでした。しかし時間が経つにつれ、だんだんとこの賞の重みとともに、嬉しさもこみ上げてきました。今回このような賞をいただくことができたのは、反応有機化学研究室の先生方のご指導をはじめ、勉強会で親身に教えてくださった先輩方、そして支え合い時には切磋琢磨した同期の友達がいたためであると思います。この場を借りて、感謝の気持ちを述べさせていただきます。
本賞は、大学院博士過程前期試験での結果により贈与されるものです。私は学部生時代、講義にはなるべく積極的に参加していたものの、飛び抜けて成績がよいということはなく、努力してもそれほど結果はついてきませんでした。それは、やはり自分一人で勉強することの限界があったためだと思います。大学院試に向けての勉強は、絶対に自分一人では気持ちが続きませんでした。研究室の友人とともに毎日勉強ができたからこそ、今に至ると考えています。
私の院試勉強は、研究室に配属後すぐに始まりました。私のグループでは有機化学の勉強会があり、半年間かけて今まで使っていた教科書の復習を行います。自分の場合、有機化学に自信がなかったため、別の問題集も同時並行で解くことにしました。分からないところを先輩方に尋ねると、その度に親切に教えてくださいました。中には1を聞くと10教えてくださる先輩もいて、自然と深くまで理解するようになりました。さらに研究室全体での勉強会もあり、学習面で充実した生活を送ることができました。
現在私は、学部3年生のときに与えられた研究テーマを継続して行っています。その中で、研究とは一朝一夕では終わらず、長い年月をかけて花開くものであると身をもって感じました。日々の前進は小さいですが、そこで怯まずに一歩を踏み出し続ける。この姿勢が必ずしも表立った結果へと直結する訳ではありませんが、目に見える形ではなく・ニも必ず自分の力になってくると確信しています。これから大学院に進学するにあたり、これまで進めてきたテーマをさらに発展できるよう、日々精進していこうと考えています。
最後になりましたが、今回このような機会を設けてくださった東北化学同窓会の皆様に感謝の気持ちを表しますと共に、同会の今後の益々のご発展を祈念申し上げます。
化学専攻賞受賞を受けて
草野 修平
この度、化学専攻賞を受賞することとなり、大変光栄なことと感じております。博士課程での研究成果が本受賞の選考理由であり、自分が行ってきた研究がこのように評価されたことは、率直に嬉しく思っております。
受賞に際し、私の研究生活を少し振り返ってみたいと思います。大学院時代の5年間、細胞内の遺伝子発現を自由自在にコントロールできるような人工核酸(天然の核酸に機能性を付与した分子)の開発を一貫して行ってまいりました。遺伝子発現の人工的な制御法は、難治性疾患に対する新たな治療法として期待されているため、非常にやりがいを感じながら研究に取り組むことができました。その一方で、研究というものは最先端の課題に取り組む訳で、やはり一筋縄ではいかず、5年間苦難の連続であったのも事実です。さらに、私の研究分野では、有機化学、核酸化学、分子生物学、細胞生物学など多岐にわたる分野の高度な知識と技術が求められるため、融合領域研究ならではの難しさも痛感しました。このように、なかなか苦労の多かった5年間の研究生活でしたが、私の場合、「実験が上手くいかない理由の考察および問題点の提起、そして、その問題点を解決するための新たな実験系の構築を行い成功へ導く」、これこそが研究の醍醐味であり、研究者としての腕の見せ所であると考え、ある意味で困難すらも楽しんでいたように思います。化学専攻の後輩が研究に行き詰っている時にこの寄稿文を読み、少しでも研究の励みになれば幸いです。
これまで研究を続けてくることができたのは、指導教員である永次 史 教授、生命機能分子合成化学分野のメンバー、さらには東北大学での9年間の学生生活の間に関わった多くの方々の支えがあったからだと思っています。この場を借りて御礼申し上げます。また、博士課程修了後は、米国にて博士研究員として学術研究を続けることとなりました。東北大学での学生生活を通して得た知識・経験を礎とし、研鑽を積み、研究者としてさらなる飛躍を遂げ、科学の発展に貢献していきたいと考えております。
最後になりましたが、このような機会を与えていただいた東北化学同窓会に感謝申し上げるとともに、同会の益々のご発展をお祈りしております。
化学専攻賞賞受賞を受けて
今村 貴子
この度化学専攻賞をいただきました、今村貴子です。博士課程を修了するまで、多くの皆さんからの助けがありました。研究においては、教授の森田明弘先生、当時助教の石山達也先生、当時四年生だった水越さんに感謝申し上げます。投げ出さずにしつこく(細く長かったかもしれませんが)続けたこと、人間として少しでも成長したことに対して、頂戴した賞かと思います。この場を借りて、研究室内外の化学専攻の皆様にお礼の気持ちを表したいと思います。
2007年秋に、当時新設されたばかりの計算分子科学研究室に参加しました。私は理論化学が得意だとか、コンピュータおたくだとかいうわけではなく、むしろ得意でないけれど挑戦してみようという気持ちで参加しました。研究室に入った途端に物理の勉強ばかりになり、化学科だった痕跡はどこへ?という気持ちになったものです。飲み込みが早いほうでもなく、自分で納得できなければ次へいけない性分で、6年半も研究室にいながら、ゆっくりとゆっくりと進んできたと思います。実験装置を操作するのと違って、「してみせる」ということがなかなかできない計算化学では、経験ある人から若い人へと教えてみせるとか、協力しあうというのが本質的にしにくいと感じます。そのせいなのか、先輩・後輩という感覚が希薄なところもあって、これは、一期生でありながら先輩としてどう振る舞うべきか自分でとても迷っていたせいだとも思います。D3の夏に韓国・ソウル大学のKang Heon教授の研究室に3か月滞在した折には、韓国の「年長者を絶対的に敬う」という価値観に基づいた上下関係を目の当たりにし、先輩がしっかり決めるときは決めるというやり方がよく見えました。なんとなくそれに感化されて帰国後の残りの時間を過ごしたと思います。
私は、四年生の卒業研究から博士論文の研究まで、一貫して「電解質水溶液の表面構造」について研究してきました。石山助教(当時)が取り組んできた研究では主に酸の水溶液や、表面に現れやすいイオンを含んだ塩の水溶液を扱っていましたが、私はそのあとを続ける格好で、表面に現れにくいイオンを含んだ塩や塩基の水溶液の問題に取り組みました。塩の種類を変えればいろいろな水溶液を作れるわけですが、計算機の中でそれをしようとすると、分子モデルを用意する必要があります。分子モデルを作る経験もしましたが、さんざん工夫を凝らしたモデルがうまくいかず、凝りすぎないようにしたほうがうまくいった、ということもありました。実際にやってみないと研究はどうなっていくかわかりません。全く経験のなかった私がプログラムを書き、研究をしていることを思えば、それなりに進歩したものだと思います。
プログラムを書いていると、その中にある間違いを見つけて正しく直す「バグ取り」の作業というのがあります。バグ取りは科学でもなんでもないとよく言いますが、患部を見つけるのが意外と難しい場合も多く、学生にとってはそれに割く時間も決して少なくはありません。数式をプログラムに乗せるときに、理解が怪しいところがあったためにミスをしたり、バグではなくても、物理的に変わった数値が出てその理由を探したり、私もいろいろな目に遭いました。計画段階、書く段階、チェックする段階と各段階に見直しのチャンス、なるべくバグを出さないようにする仕方があると思いますが、バグも自分で作ったもの。きちんと向き合えば、必ずとれます。この過程は、ほかの科学的な研究の場面でも、ほかの仕事の場面でも、生きる考え方ではないかと思います。自分にも言い聞かせるとともに、後輩たちにも伝えたいと思います。
バグ取りのような舞台裏のことを研究室外の人に見せる場面はめったにありませんが、研究成果として、計算分子の人は、分子動力学シミュレーションを使って一体どんな化学を見せてくれるのか?そういった期待と興味の目が、特に物理科学系の講座の皆さんから向けられていたように感じていました。何かの発表の機会には私たちの研究室の発表を期待してみてくださった方々には感謝申し上げます。有効な議論が、研究を進める糧になったと思います。私などはずっと続けて同じ研究テーマを持っていましたので、もう聞き飽きたほどに感じる方もあるかと思いますが、博士課程の研究をもって塩基性の水溶液の問題がクリアになり、これで一通り電解質水溶液の典型例を制覇したことになったと思います。今後ここから枝葉が出て、また別の研究の土台になったらうれしく思います。
最後に、化学専攻の外で私の博士時代の生活を豊かにしてくれた関係者の方を紹介したいと思います。理学部のキャンパスライフ支援室のティーチングアシスタントとしての私を支えてくださった皆様。博士人財センターの高度技術経営塾(現 イノベーション創発塾)やキャリア支援室でお世話になった皆様。大学での友人たち、とくに、同時に入学し、博士課程まで進み共に修了した環境科学研究科のSさんや地学専攻のAさん、この人たちが頑張っていると思うと私も励みになりました。
近く、地下鉄東西線が開通し、理学総合A、B棟に続く新棟が完成し、農学研究科が移るなど、化学専攻まわりの環境も変化することと思います。その変化を直接見られないのは少し残念ですが、化学専攻で活躍される皆様の活躍、ご多幸をお祈り申し上げます。今後一年間は学振の博士研究員として同じく東北大学の原子分子材料科学高等研究機構の栗原和枝教授の研究室の一員として活動する予定です。どこかでお会いした折には、よろしくお願いします。
青葉理学振興会奨励賞受賞を受けて
斎藤 健吾
この度、青葉理学振興会奨励賞を戴くことになりました。受賞に際し、私の学業を支えてくださった、また現在支えてくださっている全ての方へ、この場を借りて感謝いたします。
私は計算分子科学研究室に所属しており、今はシミュレーションの基礎と手法を学ぶ研究の準備段階にいます。化学で解明される現象は究極的には分子の振る舞いであり、実験家の方々が現象を直に測定して分子の振る舞いが示す性質から分子描像を解釈するのに対し、シミュレーションは計算機の中に実験を再現して直に分子描像を”観察する”ことができます(その再現性の根拠は実験結果との対応に拠らなければなりませんが)。実験と協力し、実験では追えない分子描像の本当を理解することが計算科学の使命であり、これからの私が目的とするところです。
学問としての目的とは別に、個人的な欲求もあります。その欲求は私の化学という学問に対する以下のような考え方に基づいているものです。
化学は、試薬と環境の組み合わせで多様な反応を生み出します。その方法は全てが経験的というわけではなく、論理的でもあると私は知りました。この論理は化学式の左辺と右辺を結ぶ論理なのですが、ここには、巧妙で少し狡い化学の側面があらわれていると思います。なぜなら、左辺と右辺の間の矢印に押し込められた過程に対しては、その徹底的な追究を(それが必要か否かは立場の違いに拠りますが)放棄するからです。狡さを克服し、ひとつの誤魔化しもない状態で、理性に支えられた学問として化学を成立させる立場にいたい。これが私の個人的な欲求です。
最後に、このような機会を与えてくださった東北化学同窓会の皆様に御礼を申し上げ、その益々のご発展をお祈りいたします。
青葉理学振興会奨励賞受賞を受けて
野口 柚華
この度、青葉理学振興会奨励賞をいただきましたことを大変嬉しく思います。熱心に講義をしてくださった教授、教員方をはじめ、ともに勉学に励んだ友人、支えてくれた家族、すべての方に深く感謝申し上げます。
私は震災が起きた年に入学しました。津波の被害により多くの方が犠・オになりましたが、中には私たちと同じく学校に通う年代の方も多くいたと知り大変心が苦しくなったのを覚えています。大学に入学したら、被災地の仙台で私は何ができるか考えたとき、亡くなった人の分も精一杯生きて勉学に励むこと、そして被災地の人に元気を与えられる何かをやるということでした。
大学へ入った私は、音楽で仙台を元気づけようと学友会交響楽部に入部しました。毎日夜遅くまでの練習で勉学は二の次になることが多々ありましたが、演奏会などを通して少しは被災地に笑顔をもたらせたのではと思っております。
勉学面においては、2年生後期から専門の授業、実験が始まり、難しくてわからないことばかりでくじけそうになることもありましたが、好きな化学を少しでも理解できたらと分からないなりに何かを吸収しようと必死でした。
受賞の知らせを聞いたとき、ただただ驚きました。とても恐縮しましたが、自分へ大きな自信を与えてくれました。この賞は私一人だけでは成し得なかったことで、私を支えてくれたすべての人、環境のおかげだと思います。
現在は、林研究室で有機化学を研究していますが、わからないこと、失敗ばかりで、研究の大変さを実感しております。研究者としてはまだスタートラインに立ったばかりで大変なことも勉強しなければならないことも盛りだくさんですが、いつか立派な研究者になって、私をここまで成長させてくれたすべての人への恩を返せるように頑張ろうと思います。
最後になりましたが、このような機会を与えてくださいました東北大学同窓会皆様に深く感謝申し上げるとともに、益々のご発展をお祈り申し上げます。