学生受賞記念寄稿

化学専攻賞を受賞して 相川 春夫

青葉理学振興会賞、化学専攻賞、日本化学会第89春季年会学生講演賞を受賞して 菅野 学

藤瀬賞を受賞して 田伏 英哲

第49回天然有機化合物討論会奨励賞及び第25回井上研究奨励賞を受賞して 中村 葉子

荻野博・和子賞受賞にあたって 松尾 里美

荻野博・和子賞を受賞して 松野 太輔

化学専攻賞を受賞して


相川 春夫


 この度、化学専攻賞を受賞でき大変光栄かつ嬉しく思っております。この受賞は私の努力だけでなく、指導して下さった浅尾直樹准教授、山本嘉則教授をはじめとする諸先生方のお蔭であると感じております。また、研究に関してのみならず研究室を越えてお世話になりました諸先輩方、同期の皆様に感謝申し上げます。さらに申しますと後輩の皆様のお蔭で自分に甘えず常に向上心を持って励んで来られたと思っております。

 現在、私は東北大学薬学研究科分子設計化学分野で山口雅彦教授の下、助教としてラセン不斉分子の合成とその機能性分子への応用研究を行っています。理学研究科に在籍中は反応開発を行っていたため対象とするのは比較的低分子量のものでしたが、現在は分子量数千にも達するオリゴマーを対象にした研究を行っているため新しい研究方法・分析機器等を学び、刺激を受ける日々を送っております。

 ここで化学専攻賞の意味について考えてみたとき、それはこれまでの研究経緯に対してのみならず、これからの自分に対するものと私は受け取りました。すなわち私がこの様にして得た自分の知識・経験を研究結果や教育に繋げていくことが化学専攻賞の意味だと信じております。

 また、所属が変わり、私が改めて感じたことの一つに人との繋がりの大切さがあります。例えば今までお世話になった化学専攻各研究室の方々とは今でも仲良くさせていただいておりますし、現在所属している薬学研究科では以前から交流のありました方々を通じて良い関係を築けていると思います。このことがあるからこそスムーズに新しい環境に順応できたと思います。この意味でも本同窓会を大切にしていこうと思います。

 最後に、このような機会を与えてくださいました東北化学同窓会に心より感謝申し上げます。また、同窓会の皆様の益々のご発展をお祈りいたします。

ページトップへ


青葉理学振興会賞、化学専攻賞、日本化学会第89春季年会学生講演賞を受賞して


菅野 学


 東北大学大学院博士後期課程を修了するにあたり、青葉理学振興会から「平成20年度青葉理学振興会賞」を、理学研究科化学専攻から「平成20年度化学専攻賞」を賜りました。また、日本化学会から「日本化学会第89春季年会学生講演賞」に選出して頂きました。長い学生生活を終えて新しい道へと踏み出す折にこれらの名誉ある賞を頂戴しましたのは、先生方・先輩方からの餞と感じ大変嬉しく光栄に存じます。

 これらの賞は大学院在籍時の研究業績を評価して頂いたものです。私はこれまで「強レーザー場誘起超高速電子・核波束ダイナミクスの理論的研究」に取り組んできました。強レーザー場とは、光との相互作用によって分子の電子状態が激しく時空間変化する強いレーザー場を指します。私はキラル芳香族分子のπ電子回転(環電流)を分子内座標系で誘起・制御する超短レーザーパルス設計法を開発しました。これは一般の多原子分子における電子の運動を光制御するための理論的基礎と言えます。また、芳香環に沿ったπ電子の回転方向に依存して分子振動の振幅が大きく異なることを理論計算から明らかにしました。アト秒スケールの電子運動がフェムト秒スケールの分子振動を通じて観測できることを示唆する意義深い結果であると考えております。

 このような先端的研究を私の独力で進められたはずはありません。私が受賞に至ることができたのは紛れも無く、研究室配属時から6年半もの間お世話になった藤村勇一客員教授や河野裕彦教授を始めとする数理化学研究室の教員・事務補佐員・研究員・学生の皆様からの厚い御指導・御支援のおかげです。この場を借りて心より感謝致します。

 また、私は研究を生活の主軸としながらも、それ以外の時間は専ら趣味である英会話・バドミントン・スノーボードなどに費やしていました。これらを通じて出会った友人達から多様な価値観を学び、私は1人の人間として成長できたと信じています。そうして得られた精神的充実が、研究を遂行する上でもプラスに作用したことは間違いありません。大切な友人達にも「ありがとう」を伝えたいと思います。

 私は現在、日本学術振興会特別研究員として東京大学においてこれまでとは違ったアプローチで分子の電子・核波束ダイナミクスを研究しています。ここでも東北大学で学んだ知識・経験が研究の礎となっていることは言うまでもありません。創造的な理論研究によって未知の領域を開拓し、自然科学の発展に貢献できるよう今後も研鑚を積み重ねていきます。

 最後に、このような機会を与えて下さった東北化学同窓会の皆様にお礼を申し上げると共に、益々の御発展をお祈り致します。

ページトップへ


藤瀬賞を受賞して


田伏 英哲


 この度、藤瀬賞を頂くことが出来ました。受賞にあたりまして、まずは寺田眞浩先生、中村達先生、椴山儀恵先生にお礼申し上げたいと思います。また、院試勉強会にて熱心に指導して下さった先輩方に、心から感謝申し上げたいと思います。

 院試から既に丸2年が経ちましたが、当時のことをよく覚えています。

 この年の寺田研究室は希望者が多く、大学院でも同研究室に残るには院試成績上位に入るしかないという状況でした。しかし、そのようなプレッシャーも夏休みという巨大な誘惑の前には無力で、夏休みに入ってから最初の1週間、私は自宅で勉強しようとしては失敗していました。

 そこで私は、活動場所を理・工学部図書館に移し、そこで友人達と勉強を始めました。

 図書館にいることで、様々な誘惑を排除することが出来ました。また友人との間には、いつの間にか互いに対抗意識が生まれ、黙々と勉強に取り組むことができるようになりました。途中からは歯ブラシやタオルを持ち込んで、半合宿のような生活をしていました。

 とはいえ弱い気持ちと夏休みの誘惑に耐え切るのは難しく、度々ワンセグが活躍しましたし、図書館に置いてあったサンデー毎日やスポーツ紙にもお世話になりました。不幸にも七夕祭りには縁が無かったのですが、心なしかいつもより人が少ない図書館はさすがに寂しく、夕方に帰ってひたすら映画を観ながら酒を飲んだ記憶があります。

 この夏をなんとか最後まで走り切れたのは、ひとえに目標を同じくする友人達のお陰です。また化学科に限らず、同じサークルに所属する工学部の友人達が頑張っている姿も励みになりました。このような時期を共にしたメンバーとは、今日に至るまでの研究生活においても良い関係を築いており、単なる知識の習得や合格のための時間ではなかったのだと今更ながらに感じています。

 現在私は、キラルリン酸触媒による高立体選択的ヘテロDiels-Alder反応の開発を行っています。院試より半年前に頂いたテーマですが、予想外な発展もあって、漸く1つ目の区切りに辿り着こうかという所です。ともすれば手を抜いてしまいそうになる性格ですが、2年前の夏を思い出して頑張ろうと思っております。

 最後に東北化学同窓会の皆様にお礼を申し上げるとともに、本同窓会の益々のご発展を心からお祈り申し上げます。

ページトップへ


第49回天然有機化合物討論会奨励賞及び第25回井上研究奨励賞を受賞して


中村 葉子


 この度、第49回天然有機化合物討論会奨励賞及び第25回井上研究奨励賞を受賞いたしました。天然有機化合物討論会奨励賞は天然有機化合物討論会の口頭発表に対して送られる奨励賞です。本討論会は、天然物化学の分野の、学部の枠を越えた学会です。タイトルは「エナンチオ・ディファレンシャル法によるジャスモン酸配糖体型就眠物質受容体タンパク質の生物有機化学」で、博士課程の研究の成果を評価していただき、大変光栄に思っております。また、井上研究奨励賞は、理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年の間に博士の学位を取得した35歳未満の研究者で、優れた博士論文を提出した若手研究者に対し贈られる賞で、今回、このような賞をいただき身に余る光栄です。

 本研究は、博士課程に進学したときから着手した研究です。マメ科植物の多くは、就眠運動と言われる一日周期の葉の開閉運動を行っています。その運動を制御する活性物質が単離されており、その活性物質によって、就眠運動が制御されるメカニズムを、分子プローブを用いて明らかにするという、ケミカルバイオロジーの研究です。しかし、分子プローブはしばしば、望む特異的結合とともに、多くの非特異的結合を与えるという問題点があります。そこで、私たちは物理化学的性質がほぼ等しく、標的タンパク質との結合能のみが異なるエナンチオマーを基にしたプローブをコントロールとして併用する「エナンチオ・ディファレンシャル法」を開発しました。ジャスモン酸配糖体型就眠物質を基にした光親和性プローブを開発し、それを用いる標的タンパク質探索にエナンチオ・ディファレンシャル法を適用することにより、微量の膜タンパク質である就眠物質の標的タンパク質の検出に成功しました。今後は、この受賞を励みに、標的タンパク質の同定、多方面からの作用機構の解明を行っていきたいと考えています。

 最後になりましたが、本研究テーマと恵まれた研究環境を与えていただきました上田 実先生に深く感謝いたします。また、上田研究室のスタッフ、卒業生、学生の皆様の協力があってこそ、研究を進めることができました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

ページトップへ


荻野博・和子賞受賞にあたって


松尾 里美


 この度,荻野博・和子奨学賞を頂くことができ,大変嬉しく思います。このような賞の存在を全く知らず,ある日研究室の机に封筒が置いてあり,非常に驚いたことを覚えています。自分が受賞するようなことをした覚えがなかったので,何が何だかわからなかったのですが,学部の成績優秀者に贈られる賞だと聞いて改めて驚きました。特に自分が頑張っていたというわけではなく,わからないところを質問したり,議論し合える友人が周りにいたことが大きかったのだと思います。私たち学生のために講義を考えてくださった先生方,いつも支えてくれている友人達に感謝したいと思います。

 受賞の話が出たときに,私の周りの化学科の同級生でこの賞の存在を知っている人はほとんどいませんでした。学生にとって,このような賞があることは励みになると思うので,もっと賞の存在が学生の間に広まってほしいと思います。また,賞のルーツや化学科の歴史などについてももっと知る機会があればいいと思いました。自分がどういう場で学んでいるかを知ることは,学生のやる気につながると思うからです。

 私は,現在無機化学研究室に所属しているので,荻野先生の名前はよく耳にしていたのですが,先の授賞式で初めてお会いすることができました。現在は放送大学でお仕事をされているそうで,いろいろと興味深いお話が伺えました。子どもが手を離れたくらいの主婦層の学生さんも多いそうで,いくつになっても学びへの意欲が高い人,学びたくても学べなかった人が世の中にはたくさんいるのだと思い,気持ちが引き締まりました。私は,社会に出ることもなく大学に通わせてもらっている状態なので,すごく贅沢なことをしているのだと思います。この状況が当たり前なのではなく,とても恵まれているのだということを頭において,より一層頑張っていきたいと思います。

 最後に、このような機会を与えてくださった東北化学同窓会の皆様にお礼申し上げるとともに、益々のご発展をお祈りいたします。

ページトップへ


荻野博・和子賞を受賞して


松野 太輔


 この度はこのような素晴らしい賞をいただき、大変嬉しく思っております。荻野博・和子両先生と、各分野の講義で様々な知識を身に付ける指針を与えてくださった先生方に厚く御礼申し上げます。授賞式では荻野博先生と直接お話させていただく機会もあり、大変光栄でした。

 僕が生業にしようと考えている化学は、「物質世界はどのようなものから構成されているのか、構成物質はどのように振舞うのか」という疑問に答えてくれると同時に、このレベルでの物質や概念の創造ができるという点が僕はとても気に入っています。新しい、面白いものを考え、作り上げて世の中に発表することが小さいころからの夢だった僕にとって、合成化学は大きな夢が持てる分野だと感じています。有機化学第二研究室に入り実験を始めてからは、分子という目に見えない極小のものを扱うことの難しさをひしひしと感じ、またNMRなどの分析装置の凄さには素朴に驚いています。実験を重ね、その上に様々な理論を積み立ててきた歴史上の先生方と、何世紀もの歴史そのものに深い尊敬の念を抱いています。

 毎日ディスカッションを重ね実験を進めるにつれ、誰もを驚かせるような新しい物質、新しいデザイン、新しい概念を自分の力で創造するには道はあまりに遠いと感じる毎日です。どのようなものが新しいのかということさえ今は分かりません。新しい、面白いものを作りあげるための考え方、合成に必要な反応の知識、実験方法の知識、合成された分子のポテンシャルを多面的に調べ上げるセンス、世界の研究の流れの読み方などを、磯部先生のもとで身に付けていきたいと思います。

 日々の実験を大切にし、分野にこだわらず様々な知識を吸収して、一歩一歩進んでいきたいと思っています。いつか僕の考えた分子が世界中を驚かせ、笑わせることを夢見ています。

トップ ホーム