研究所・研究室便り


「多元物質科学研究所便り」 多元物質科学研究所 笠井 均

「数理化学研究室の1年をふり返って」 物理化学講座 数理化学研究室 河野 裕彦


多元物質科学研究所便り


多元物質科学研究所 笠井 均


 私は東北大理学部化学第二学科(平間研究室)を卒業後、平成3年4月から当初修士課程学生として当時の反応科学研究所(現在、多元物質科学研究所)に配属されました。それから、途中短期留学を挟んでいますが、既に17年間の歳月が流れました。その間、研究所のある片平地区に関しては、変わった部分もあれば、変わっていない部分もあります。

 (変わったところ)

1.野球グランド及びその隣接エリア(生協食堂やサークル棟などがあった)は、多元研や通研の新たな研究棟やさくらホールが建造された。(当然、片平地区では球技全般できなくなりました。また、生協食堂も北門だけとなりました。)さらに、これまでの研究所に関しても、その多くがリフォームされつつあります。(写真参照)

2.サンモール一番町のアーケード内の店舗がかなり変わってしまいました。例えば、丸善は、仙台駅近くに移転してしまいました。ちなみに、元丸善の場所の近くに、10年後新たな地下鉄ライン:東西線の駅ができるそうです。

 (変わってないところ)

1.一般の人が相変わらず通過や散歩をしており(車以外は、別に出入り規制をしているわけではありません)、まるで公園とも思える雰囲気が残っている。また、店舗は一部入れ替わっているが、われらが文化横丁の雰囲気は変わりようがないように思える(ちなみに、源氏もまだやっていますよ。)。

2. 老舗や人気のある飲食店は、依然として好調に営業している。例えば、うなぎの開盛庵やとんかつ大町は、老舗としてまだまだ健在です。人気店としては、シルビア、味の横綱、名月、藤夕、樽などが挙げられますが、相変わらずいい仕事をしています。(あっ、あと、北門の生協食堂も!)

 こうして書いていると、17年間も雰囲気がとても良いところで仕事していたのだなぁと少々感傷的になってきました。皆様も片平地区にご訪問されるときには、私の書いたことをどうぞご確認くださいませ。きっと、片平の良いところが見えてくるハズです。ちなみに、ここに挙げた飲食店は、かなり私の主観が入っております。納得されない方もいると思いますが、ご容赦くださいませ。


旧反応研入口

 旧反応化学研究所の入口

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数理化学研究室の1年をふり返って


物理化学講座 数理化学研究室 河野 裕彦


河野先生


 数理化学研究室は平成7年に藤村勇一教授のもとに設立され、量子化学や分子動力学などの数理的な方法に基づいて分子のダイナミクスを研究するグループです(平成16年度と17年度の同窓会誌に研究に関する記事が掲載されています)。私も設立当初から助教授として参加し、平成18年12月に数理化学研究室の教授に昇任しました。その後、平成19年3月まで、藤村勇一教授、長谷川喜範助教授、大槻幸義講師の3人とともに研究室を運営することになりました。

 私の教授昇任後、1年が瞬く間に過ぎてしまいました。この1年は数理化学研究室にとって節目の年でもあり、さまざまな出来事がありました。平成19年3月には、藤村勇一先生と長谷川喜範先生がご定年を迎えられました。3月9日に藤村先生の最終講義が行われ、作並温泉で退職記念の同窓会を開きました。遠方から50名を越える卒業生や職員が参加し、研究室の思い出や各人の近況などについて夜遅くまで話が尽きませんでした。4月からは、大槻講師が准教授に昇任し、保木邦仁助教が研究室の一員に加わり、新しい体制がスタートしました。

 平成19年はシンポジウムや学会の開催に奔走した年でもありました。まず、5月には片平の「さくらホール」で超高速電子・分子ダイナミクス国際シンポジウム(International Symposium on Molecular Science of Ultrafast Electronic Dynamics in Sendai)を開催しました。本シンポジウムでは、分子や分子集合系の電子ダイナミクス及び関連した現象の理論的・実験的研究に従事している日本はじめ米国、ヨーロッパ、アジアの第一線研究者や学生およそ100名が一堂に会しました。非経験的量子化学計算法や密度汎関数法などの量子化学的手法の開発やこれらの手法を適用して得られた実験結果の解析などに関する成果が発表されました。超高速励起状態分子ダイナミクス、時間分解光電子スペクトル、アト秒パルス発生と軟X線非線形光学、レーザーを利用した量子反応制御などの分子科学の研究テーマから細胞の光応答まで幅広いテーマが取りあげられ、質の高い討論を行うことができました。反応制御理論の開発と応用に関する研究を長年にわたって進められた藤村先生に最後の講演者をお願いし、大変思い出に残るシンポジウムになりました。多くの企業や学協会にも支援していただき、常日頃私たちが携わっている基礎研究にも理解を示していただいている企業の方々への感謝の念を新たにする機会ともなりました。

 9月には第1回目の分子科学討論会を仙台で開催することになりました。分子構造総合討論会と分子科学研究会を母体とする新学会「分子科学会」が発足し、その記念すべき第1回の討論会を仙台で開催するようにとの要請がありました。実行委員長の本化学教室の大野公一先生のもと、大学院理学研究科化学専攻、多元物質科学研究所、大学院薬学研究科の30名を越える物理化学系の教員が中心となって討論会の準備にあたりました。C60フラーレンの発見者である1996年ノーベル化学賞受賞者H. W. Kroto教授をお呼びした特別講演などもあり、ほぼ1300名の参加者を得て大変盛況な国内最大の分子科学関連の討論会となりました。私たち数理化学研究室も総力をあげて協力するように努めました。多くの時間を費やすことになりましたが、教職員・学生とも1000名を越える学会の準備がどのようなものかを知ることができ、大変貴重な経験となりました。

 数理化学研究室は設立当初川内北キャンパスにあり、平成9年に青葉山にある大学院理学研究科の合同棟に、そして平成20年3月には改修された化学棟に移りました。化学棟に移るまでの研究室は狭隘で、計算機と一緒に雑居する様な状態も続きました。また、平成18年の12月8日夜半に、多くの計算機が置いてあった物理C棟の数理化学研究室の部屋で、中央配電盤のショートによって200Vの電流が流れる事故がありました。計算機と通信できない状態に気がついた学生が、すぐに合同棟から物理C棟に駆けつけたときは、多くの計算機の電源から煙が出ている状態でした。学生が計算機の異常に気づかなかったら、おそらく物理C棟が火事になったのではないかと言われました。学生の迅速な対応・機転に助けられました。事故の原因は配電盤の老朽化で、この事故のため2ヶ月程度研究がストップしてしまいました。このように決して満足できる研究環境ではありませんでしたが、長い間、その中で研究を続けて、内外から評価される成果を出してくれた学生に改めて感謝する次第です。

 現在、数理化学研究室では、レーザーと分子との超高速応答を理論的に解明し、反応制御などに応用することを目指した物理化学の研究を中心に行っています。テーマは多岐にわたっており、中性子散乱を利用した水のネットワーク構造の解明、細胞の光応答、量子コンピュータなどの学際的な研究領域にも踏み込んでいます。このような学際領域の私たちの知識はまだ限られており、東北化学同窓会の皆様からも多くのご助言を頂きたいと思っております。今後とも東北化学同窓会の皆様のご支援、ご鞭撻を頂けますようお願い申し上げるとともに、同窓会の皆様のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。


数理芋煮会

 平成19年10月の計算分子科学研究室との合同芋煮会の様子。牛越橋付近の広瀬川の河原にて。


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