青葉理学振興会奨励賞を受賞して
小田桐 悠斗
この度、青葉理学振興会奨励賞を受賞させて頂きました。このような賞を受賞させて頂いたことに感謝したいと思います。
この賞の受賞の知らせを聞いたときは、大変驚きました。まさか合唱ばかりやっていた自分がこのような賞を受賞することができるなんて思いもしなかったからです。授与式当日も、合唱団の合宿が行われていた盛岡から日帰りで出席するという慌ただしさでした。そんな私が受賞できた理由を考えてみると、基礎をしっかりと理解しようとするという勉強スタイルを持っていたからではないかと思います。やはり、何事も基礎をしっかりやることが良いことにつながるのだと思います。
ここで、自分の研究活動について簡単に書かせていただきます。私は現在無機化学研究室に所属して、飛田先生の下でシリル基とシリレン配位子を同時に持つシリル（シリレン）錯体に関する研究を行っています。私は金属錯体に興味があってこの研究室に入り、現在まで研究を行ってきました。空気や水に不安定なものを扱うということで、慣れない操作がたくさんあり、今まで苦労を積み重ねています。そして、研究とはなかなか難しいもので、まだ思うような結果は出ていません。しかし、配属になってから１年間で、何度も失敗を重ねても、いつかはうまくいく可能性があるということを学びました。成功とは、数多くの失敗の上にあるのだと実感しています。今回は、学業成績に対して表彰されたわけですが、これを今後の研究活動の糧としていきたいと思っています。
最後になりましたが、このような機会を与えて下さった東北化学同窓会の皆様にお礼を申し上げると共に、益々の御発展をお祈り致しております。
青葉理学振興会賞を受賞して
中山 慎一朗
この度、平成十八年度青葉理学振興会賞を受賞させていただきました中山慎一朗と申します。この賞をいただけましたことは大変名誉なことであり、両親、ならびにその他の親族にも大変喜ばれ、浅学の身に余る光栄と恥じ入りながらも誇らしく思っております。
受賞の知らせを受けたのは平成18年の3月のことでした。当時私は研究室に配属されて半年足らずの新人であり、研究室の雰囲気には慣れてきたものの、研究活動に用いる計算機の扱い方や各種数値計算の技術を十分に理解できず四苦八苦しており、とても研究に携わることのできる状態ではありませんでした。これから成し遂げなければならない課題や目標のことを考えると先が思いやられ、自信を完全に喪失し、作業も全くはかどっていなかったことを思い出します。然しそこで伝えられました受賞の知らせに強く元気付けられ、自信を取り戻し、精力的に活動することで研究開始にこぎつけることができました。
現在は当大学の数理化学研究室において、藤村勇一教授のご指導の下、レーザー光により駆動される分子モーターの理論的研究に携わっております。まだ研究活動に参加して間もない私には、分からないこと、知らないことばかりではありますが、問題・課題を一つ一つ丁寧に切り崩し、日々前進し続けております。こうして努力を続け、いつか一人前の研究者となり、理論化学の分野において広い視野と深い洞察をもって成果をあげることが私の夢であります。
青葉理学振興会賞を受賞して
山﨑 優一
このたび、栄誉ある青葉理学振興会賞を頂くことができ、大変うれしく思っております。また、選出いただいた関係諸先生方に厚くお礼申し上げます。今回受賞の対象となった研究業績は、化学専攻理論化学研究室における研究の成果であり、終始ご指導・激励を頂いた大野公一教授をはじめ、共同研究者の皆様ならびに大野研メンバーの皆様にはこの場をお借りして、改めて感謝の意を表したいと思います。
研究分野がますます細分化・応用化する中で、分子の形や分子軌道の概念は化学のみならず広く自然科学全般において重要な役割を担い、成功をおさめているモデルであると感じます。分子の形（球と棒、van der Waals表面、電子密度、相互作用ポテンシャル面など）や分子軌道（Hartree-Fock、Kohn-Sham、Dyson軌道、自然軌道など）には理論的に種々のモデルが提案されてきた一方で、実験・測定技術の発展に伴い、観測によっても分子レベルでの分子の形や軌道の形が視覚化されるようになってきました。しかしながら、（そのような測定自体が困難であることは言うに及ばず）観測される分子あるいは軌道の形がいったい何者であるかといった、実験と理論のつながりはいまだ十分には解明されていません。そこで、私はヘリウムの励起原子を用いた真空中での衝突実験と理論解析法の開発を行い、分子および分子軌道の形状についての基礎研究を進めてきました。その結果、ヘリウムの励起原子に対して分子は衝突の速度に応じて劇的にその形を変化させることや、電子の授受に関わる軌道がDyson軌道であるべき実験的示唆を得ることができました。
青葉理学振興会賞の受賞は、当然私一人の力ではなしえなかったことではありますが、現在の私にとって大きな励みとなっております。最近では、さまざまな場所において若手研究者の育成、あるいは国際会議等での学生への表彰が多くなされていることに気づくようになりました。今回は受賞を逃した優秀な人材が多くいる中、幸運にも選出いただきましたが、受賞を謙虚に受け止めて、青葉理学振興会の名に恥じぬよう今後も研究活動を進めていきたいと思っています。
最後に、このような機会を与えてくださった東北化学同窓会の皆様にお礼申し上げるとともに、益々のご発展をお祈りいたします。